オウム真理教の刑事裁判が１９９５年から１６年かけて終結した。宗教団体が犯罪集団に姿を変え、「無差別テロ」まで引き起こした事件。この間、警察や自衛隊、鉄道会社は「テロ対策」を強化してきた。

■不意つかれた攻撃、教訓に

　「やられた……」

　１９９５年３月２０日朝、防衛庁（現防衛省）の陸上幕僚監部化学室長だった山里洋介さん（６６）＝当時１等陸佐＝は職場のテレビの速報で、都心の地下鉄で起きた異変を知った。直後にあった警察からの電話で、原因はサリンと直感した。

　前年６月の松本サリン事件以来、ひそかに警察の捜査に協力していた。警察が現場で検出した試料の分析データから、サリンと断定したのは山里さんだ。

　すぐに、化学専門部隊に招集をかけた。しかし、普段は休みをとれない隊員の多くが年度末で代休をとっていた。渋滞にも阻まれ、数人が霞ケ関駅に着いたのは昼すぎ。夕方までに約２００人が到着したが、救出作業には間に合わず、除染活動が中心となった。「知識を持った隊員が警察や消防、医師らと一緒に現場で活動していたら、もっと犠牲者を減らせた」

　だが、悔やんでいるひまはなかった。その２日後、警視庁が山梨県の旧上九一色村などで教団施設を一斉捜索。サリン攻撃も想定されるなか、自衛隊も、化学防護服やガスマスクを警察の機動隊員らに貸した上で、現地に入った。教団施設から白い煙が上がり、先頭に立ってほしいと頼まれたが、法的根拠がない。防衛庁は、隊員を警察庁の技官と兼務させる人事を急きょ発令した。

　「もっとスムーズに連携できていれば」。山里さんら幹部の反省から、その後の対策が進められた。

　自衛隊と警察は２０００年、デモ隊の鎮圧などを前提としていた協定を改正し、警察だけでは対応できない武装集団に共同で対処できるようにした。０２年には全国の警察と陸上自衛隊の部隊が協定を結び、全国各地で共同訓練を実施した。

　今年１月、水戸市であった訓練には、自衛隊や警察、消防、自治体が参加。放射性物質を含む爆弾テロを想定した初めての訓練だった。同月、福井県では武装集団が列車を爆破し、サリンをまいたという想定での訓練もあった。

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